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社会問題を考える


by phtk7161
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フランス大統領選挙にみる前近代的国家への流れと、そこからの脱却の必要性について

 フランスでサルコジ氏が、次期大統領に決まった。選挙の結果はサルコジ氏53%ロワイヤル氏が47%と、当初の予想よりも両者の差は接近していた。これはサルコジ氏が勝ったとはいえ、彼を警戒する国民がかなり多かったことをあらわしているといってよい。ある意味でフランスも国論を二分する状況にあるといっていいだろう。とはいえ、サルコジ政権が今後少なくとも6年は(途中辞任がないかぎり)続くことになる。

 個人的にいえば、ああいう自己陶酔型のナルシスト的人物は好きではない。彼のような言葉の選び方ができない政治家を、私は認めない。危険な人物だとも思う(冷酷型プーチンほどでないにせよ)。そういう意味では、フランスのことを考えるとうっとおしい気分である。

       ☆       ☆       ☆

 アメリカ型市場主義を選択した今回のフランス国民の意思は、新しいグローバル化の流れに逆らえず選択されたのだとする論者も多いであろう。しかし、グローバル化による市場主義(小さな政府的経済政策)も根底からみれば、なんのことはない。単に産業革命化当初の時代に後退しているだけである。

 世界のリーダーを気取るアメリカ。この地位を支えるものは何か。それが軍事力であることはだれも否定しないだろう。これがあってこそ、今のアメリカ的市場主義をグローバルの名の下に世界に広げられるのである。そういう意味では、アメリカ人(といっても伝統的アングロサクソン系のというべきかもしれないが)の本質は独立以前のアメリカ大陸上陸どきから、なんらかわっていないといえる。

 ネイティブアメリカ(いわゆるインディアン=不適切な表現でいえば)に対し、土地に対する所有権の概念のなかった彼らに、(アングロサクソン的)契約の名のもとに暴力(軍事的力に類するもの)&詐欺師行為により(アメリカ人的合法)一方的に建国のもとである土地を取得したそのやり方は、現代でもかわらない。

 現在でもアメリカは、彼らであみ出した彼らのルールを世界基準として、押し付けようとする。もちろんヨーロッパ人(イギリス人、フランスをはじめとする)は、軍事力はともかく、人種面では本音ではアメリカ人は下級人種(そういう本音も決して肯定すべきものでないが)とみているから、そうそうアメリカのいいなりにはならない。

 しかし、日本はそうではない。アメリカの軍事力を必要以上に評価しそれに頼りすぎるあまり、経済システムをみごとなまでにアメリカ流経済システムにかえようとしている。この流れが続く限り、そう遠くない時期に、日本は間違いなくアメリカの一州として、経済面も軍事面も存立することになるだろう(三角合併など受け入れたのは日本くらいのものだ)。それは、まるでネイティブアメリカンのケースと同じと言えよう。

 ただ決定的に違うことは、ネイティブアメリカンは、当時の彼らの世界ではそのこと(土地の所有制=私有制)を理解することが困難だったのに対し、今の日本は確信犯的にそれに従っているということである。それほど、今の日本はアメリカ人になりたい竹中氏や木村剛的人物(彼らはなぜアメリカ国籍にしないのだろう)が増えているということであろう。

       ☆       ☆       ☆

 能力に自信があるものが、競争世界で勝ち残るために努力する。それはそれですばらしい。ただそれだけでは、ばかげた産業革命時代となんらかわらない。人類が立憲民主主義近代国家といえるためには、経済競争に勝とうが負けようが、どんな人間でにも衣食住は最低限保証できる世の中でなくてはならないということである。

 経済的に裕福であろうがなかろうが、システムとしてその政策を維持できない経済システムなら、それは原始時代以下の生活である。たかだか数%の人間が国家のかなりの部分の富を占有している経済システムのどこがすばらしいというのであろうか。自由主義を当然の前提としても、富が不必要(あまりに少数の人間や企業に富が集中する形)に集中するようなバランスのとれない経済システムなど何の意味があろう。その数%にはいるため、それが自己決定によるとしても、自らの体を整形しまくり、プレイボーイ誌をかざり、はたまた自分よりかなり年配の老人と結婚して莫大な遺産をつかむことのどこが、サクセスストリーというのか。

 自分の能力に自信をもつのはいい。仲間内で富をほこるのもいいだろう。でもそうでない衣食住に苦しんでいいる他人に対し、それは能力のないやつだから仕方がないという考えは、産業革命時の「馬鹿」的考えである。人間としても最低と言えよう。成功しているものが贅沢するのはけっこうなこと。しかし贅沢しつつもそうでない他人を思いやれない人間、そうでなくても最低限の生存セキュリティが社会になくてはならないと考えられない人間は、立憲民主主義にふさわし国民像とはとてもいえない。
 
 どうも、しばらくの間、こういう愚かな国民が世界中で跋扈しそうな流れである。しかし、例えばテロの問題にしても、その問題の最も根本的な解決が、経済問題にあることは否定しがたい事実である。自由主義(でもアンフェアな)を標榜する軍事事大国が、どれだけ最新の軍事兵器やセキュリティシステムをつくろうが、それだけでは絶対テロの根絶はできない。根絶するには後進国の経済面(貧困)の問題から逃げてはだめである。そしてそのためには、アメリカをはじめとする経済大国が根本的に発想を変えていかなくてはならない。

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 今のアメリカは、明らかに他国を食い物にして何とか生きながらえているのが現実の姿である。アメリカがアメリカの国内でのみ処理する経済政策をとるなら、アメリカには今の数倍もの失業者があふれ、国家の経済は間違いなく修復不能なほど破綻してしまうだろう。それをグローバルの名の下に、軍事力を背景にやりたい放題にやって何とかもたしているのが、アメリカの本当の姿である。

 私は、アメリカのリベラル的考えは好きだ。だからこそ、ブッシュ政権などとっとと撤退し、はやく民主党政権になって欲しいと思う。もちろん経済的にはその場合、日本に対するアメリカの保護主義政策はかなり強まるだろう。それでも、今の共和党の対日政策に対し、朝貢的に必要以上にサービスする日本の与党政権をみると、それをやるくらいなら、経済的にたとえもっときついめにあうとしても、そこから自力をつけていかないと、本当の意味で日本の経済復活がなったとはいえないであろう。また、このままでは、ことに軍事面で日本は後戻りできなくなる。アメリカバイキングの軍事政策(第二の馬鹿ブッシュが出現したときそれは現実となる)に付き合うことになってしまう。

 今後世界は、いよいよ軍事産業をこれまでに以上に、まとまもな産業として認知しだすだろう。そして彼らは言い出すだろう。「それは平和の問題とは関係ない。経済を発展させる一手段であると」。しかし、覚えておいたほうがいい。あれほど軍事的に圧倒的な力を誇っていたイスラエルが、なぜヒズボラに大苦戦したか。兵器が発達すればするほど、テロ組織の軍事的力も発達していく。なぜなら兵器産業がまともに商売化すればするほど、供給者にとっては、金になるかぎり需要者(お客)が誰であろうがかまわないからである。

 このブログでもすでに指摘したことだが、今のレベルまで軍事力が発達すると、もはや軍事力は決定的な力とはなり得ない。なぜなら地球レベル(対象国をこえる広い範囲にわたる、それこそまさにグローバルである)の破壊が現実となるからである。そのうちテロ組織が核を持つことすらありうる。

 したがって、原点に返れば結局今の日本国憲法の9条の精神(自衛権は当然の前提、しかしイラク的手段的自衛権・・・馬鹿な有志連合など・・・は侵略戦争で論外)こそまさに、今の世界が抱える問題の解決の道筋になるといえよう。アメリカが日本に対して与えた最も多大な功績である憲法9条の精神は、実はアメリカをはじめとする世界にとっても本当は必要なものなのである。
by phtk7161 | 2007-05-10 07:51