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社会問題を考える


by phtk7161
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政権というものの誘惑の怖さ・・・「大臣のイス」の罠

 民主党が参院選で大勝し安倍自民党が惨敗した結果、日本の立憲民主主義の危機はとりあえず回避された。

 実のところ自民惨敗の報道が選挙前からでていたことは私も知っていたが、正直日本国民の良識については、私はかなり懐疑的だったので結局自民党は40代の前半あたりに収まるだろうとおもっていた。その場合離党した新井議などが与党に合流し、安倍自民の暴走はもはや止まらないと半ばあきらめていたのが本音のところだったのだ。

 私がそう思ったのには、それなりに理由がある。今回のような投票行動ができるのなら、そもそもあの小泉劇場にそうやすやすと乗っかる国民であるはずがない。選挙にドラマ的感覚で参加してしまうような国民が、衆院で与党に3分の2取らしたことに危機を抱き、果たしてバランス感覚を発揮できるだろうか、そう思っていたのである。

 しかしふたを開けてみると結果はうれしい誤算(私にとって)ともいえる民主の完全勝利、自民公明の大惨敗である。この結果はどうみるべきか。国民が衆院選とのバランス感覚をはたらかしたのか、それとも安倍(とその仲間達)的横暴さが有権者の鼻についたのか。あるいは格差が相当深刻な事態にまでなっているのか。敵失的なものもあったし、与党の敗因はいろいろ考えられる。私はそのなかでも与党の敗因はやはり格差だと思うが、それでも「与党惨敗の結論を生み出した国民の本音はこうである」といいきるまでの自信はない。

 ただ、「憲法改正や戦後レジーム(体制)からの脱却というお前のたわごとよりも、まず国民に飯を食わせる問題が先だろう、ええ坊ちゃんよ!こっちとらそっちのほうが深刻な問題なんでえ~っ」という有権者の声がかなり根底にあったのは間違いないと思う。それに安倍首相自身がある種の「負のスパイラル」に陥って、もはやそこから抜け出せなかったこともある(むしろこちらのほうが一番の敗因なのかもれない)

      ☆       ☆       ☆

 参議院で民主党が第一党となり、確かに政権への道筋も見えてきたようにも見える。しかしそれはそれで、またひとつの危険な罠もそこには存在する。政権奪取をなんともしても手に入れたいと、度を越した与党との策略的妥協に陥ればその先には、表紙をかえただけの第二のタカ派自民党政権ともなりかねない。

 民主党に理解しておいてもらいたいのは、9条をかえるべきでないとする国民は、かえるべきであるする国民の倍いるということだ(2007年4月の共同通信調査)。安倍首相とその仲間達は、集団的自衛権が悲願であり、9条改正でそれがでなければ、現行解釈でその道を開こうともしている(柳井元駐米大使を座長とする私的懇談会がそれだ)。国民の今の声に反してまで政権奪取のために、安倍的な対米追従の道に安易に妥協することは現に慎まなければならない。
 
 政権の道筋が見えてきたとき、民主党には鳩山、前原グループという現自民と濃厚な接点をもった議員(このグループは集団的自衛権を肯定する)の存在は両刃の刃となる。彼らには常に自民に飲まれてしまう危険が存在する。民主が自民に勝てるようになったとしても、彼らが民主をのっとってしまえば自民は大喜びだろう。これでは、民主は現自民となんらかわらない。この結論では、真の政権交代がおこったとはいえないのである。

 今回の民主の勝利は、ある意味「小沢色」の勝利であって、永田偽情報にコロッとひっかかるような「前原色」あるいは、小泉政権と対決色が出せなかった「鳩山色」の民主の勝利ではない。そういう意味で、彼らが今後民主党の中心になってしまうことは民主支持のこちらとしても今後かなり警戒せねばならない。

 今後民主党がどういう方向に行くか。岡田元代表は衆院選で郵政小泉と対決し敗退した。しかし逆に言えば、小泉政権のツケである「格差」問題で安倍自民が敗北した今、岡田民主党の評価をもう一度考え直してみることも必要である。あの時岡田民主党が訴えていた小泉改革の問題点は、決して的外れでなかったといえる。今の日本の現状がそれを証明している。そういう意味では、岡田議員が党の代表としてまた再登板することがあってもおかしくない(彼は、集団的自衛権には反対の立場である)。

       ☆       ☆       ☆ 

 むかし社民党が新進党さらには自民と組み政権党となった。しかし、彼らは結局政権の中で大臣のイスにおぼれ(大臣病)理念を弱め、その存在意義を失った。今公明党がある意味この立場に近いかもしれない。そして民主まで、その誘惑に安易に乗ることは現に慎まなければならない。「現実」とい名の「おためごかし」に惑わされ安易に妥協をくりかえし、大臣のイスを手にすることはまた、転げ落ちる始まりでもある。

 もし、民主が政権の誘惑に負け、安倍的自民党と安易に妥協し、さらには前原鳩山グループを巻き込み政界再編でタカ派自民的政権が主導権を握れば(そして集団的自衛権が成立すれば)そのときには日本の立憲民主主義はまた大きな危機を迎えることになる。そうならないためにも、民主党の今後の内部での動きにはより注意していく必要がある。

 参議院選は日本の立憲民主主義にとって好ましい結果にはなった。しかし、だからといって安易に楽観してはならない。もしわれわれ国民が今後立憲的に危なくなることがあっても「大丈夫、また選挙でそれなりの結果に落ちつくさ。なんとかなるだろう。」と、今回の結果を見て安易に考えていると、次はもう本当に立憲の危機をストップできないかもしれない。そういう意味では、有権者の側も今回の結果に浮かれたばかりいられないのは、民主党と同じであるといえよう。

 
by phtk7161 | 2007-08-07 13:40