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社会問題を考える


by phtk7161
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米兵によるタクシー運転手刺殺事件について・・・低下するアメリカ兵の質的現実とその要因

  横須賀で起きたタクシー運転手刺殺事件の容疑者の逮捕は、アメリカの今の実情をかいまみせてくれる。今回つかまった容疑者はナイジェリア国籍だった。実は今アメリカでは外国籍の志願兵が多い。イラク戦争時からすでにこの事実は指摘されてきた。大量の兵士の派遣に見合う人的数がたりず、それを彼らで補ってきたのが近年のアメリカの軍事面での現実である。

 志願兵になれば市民権を得やすく奨学金ももらえる。今なお残る潜在的な人種差別あるいは絶望的ともいえる経済格差の現実のなかで、貧しさからの脱出を図りたい彼らには、志願兵を条件とする市民権・経済的利益の獲得は何より魅力的である。

 ベトナム戦争でも戦場に派遣された兵の多くは貧しい階層の者である。ブッシュのように恵まれた環境にある者は、まちがっても戦場などには派遣されない。せいぜい危険の少ない国内の任務に着く程度である。ちなみにうやむやになってしまったが、ブッシュには徴兵逃れの疑惑がある。いずれにせよ、社会的・経済的な地位の差でアメリカでは戦争時の命の価値に差別が生じるのである(もっともどこの国もそうであろうが)。

 ベトナム戦争に比べ、イラク戦争のおける反戦の機運がアメリカ国内でなかなか高まらないのは、移民の増加によりこの差別が一層広がっているからだ。ベトナム戦争時には、まだアメリカ国民は、兵の戦死を自分の身近に存在する現実問題として捉えていた。しかしイラク戦争ではそうは捉えていない。ある意味では他人事である。

 一定の地位をすでに確保しているアメリカ国民にとって、イラクに派遣される外国籍の兵が増加している現実のなかでは、兵の存在というものはもはや遠い存在である。ようするに「危険な任務(債務)だね」でも「市民権の獲得(という債権)のためには仕方ないね」「契約だからね」こういう感覚なのだ。これでは反戦気運がなかなか高まるはずがない。

 前回大統領選のとき、中流家庭の多い地域で選挙の争点となったのは、イラク戦争という対外的問題ではなく、国内の「治安」・「教育」であった。庭付き一個建で平穏に家族と暮らしている中流アメリカ人とって、戦争が自らの利益に関わる問題にならない限り所詮他人事といえる。

 そういう背景の中でおきた事件。今やアメリカ軍の兵士の質の低下は深刻である。今回の容疑者は当初「偽のアリバイ」の存在を主張していたが、それが無理とみるや、今度は「殺意」さらには「刑事責任能力」に関しても主張していくようだ。もちろんそういう主張も容疑者の権利だが、ただこれまでの事件の過程を見る限り、容疑者の悪質さは否定しようもない。

 今回の容疑者を米軍は、純粋なアメリカ兵がおこした問題として扱っているのか。「純粋な米兵とはいえない質の悪い外国籍の兵が起こした事件」そう思っているのではないか。うがった見方をすれば、だからこその捜査協力というようにもみえる。いずれにせよ、今後は当然ながら日米地協定における刑事事件についての捜査面での迅速な見直しが一層望まれる。
 
 犯人の人物像を見る限り、今回の事件を単なる一兵士の起こした事件と捉えることはできない。事件の背景には今のアメリカのかかえる軍事面における人的質の問題の現実が厳として存在する。そのことを忘れてはならないと思う。
by phtk7161 | 2008-04-04 07:54