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社会問題を考える


by phtk7161
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アメリカ大統領民主党予備選での大きな誤算・・・副大統領の段階を踏まなかったオバマ

アメリカの民主党の大統領選挙予備選挙も大詰めを迎えている。オバマで決まったといっていいだろう。もともとレース前は、ヒラリー議員が最有力だった予備選挙。彼女は共和党の候補に勝てることも、当然のように有力視されていた。

しかしこうした予想は伏兵オバマによってくつがえされた。もっとも共和党でも予備選ではジュリアーニ前ニューヨーク市長が有力候補だったから、今回の民主党の結果もありうることだ。しかし個人的にいえば、今回の結果はあまり歓迎できることではない。

ブッシュ共和党の時代は8年続いた。この期間がどういう馬鹿げた時期となったかは、ここでは一々書かない。9・11があったにせよ、ブッシュの時代は歴史に残る愚かな時代だったといいきれる。それはアメリカ始まって以来の知性(良識)の衰退期・・・もちろん相対的にだが・・・ともいえるだろう。

そういうなかこれ以上共和党政権がつづくことは、世界ににとってプラスになることではない。マケインは老齢で成熟した候補であるが、しかしやはり元軍人。アメリカの軍事力の動向が世界の平和を左右することに強い影響力を持つ以上、暴力馬鹿だったブッシュ時代と同様の・・・軍需産業とのつながりを含め・・・懸念は残る。それを防ぐためには、やはりなんとしても今回は民主党の候補に勝ってもらうしかない。

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そこでオバマである。彼でマケインに勝てるか。結論としてはNOである(3月4日のブログでも書いたとおり)。おそらくこうなるだろう。初の黒人大統領それをアングロサクソンをはじめとする、白人層がすんなりうけいれない。もちろん表立っては人種論争はおきないだろう。真っ向からそれをやることは、今のアメリカ社会にあってはタブーだからである。しかし潜在的には確実にこの構図になるはずだ。

黒人政権の誕生はまだ時期尚早という意見は、保守的黒人層・・・もともと共和党の支持者が多いが民主党の支持者も存在している・・・からもでてくる。彼らは白人社会との対立を望まない。本選が進む中で、経済的にも安定している黒人保守層は黒人政権についての白人社会の不安の空気を・・・マイナス感情・・・日に日に感じるようになるだろう。

選挙で人種が問題になること、それ自体そもそもばかげたことだ。黒人大統領が誕生することもあって当然のことだし、肌の色など大統領になることと関係ない。「だれでも大統領になれる。」それはまた不変の真理でもある。

しかし人間とは愚かなもので、その不変の真理であるはずのことがすんなり通らない。残念なことだが、過去そして現在に至るまで長い人種差別の歴史をもつアメリカ社会が、今回の選挙で初の黒人大統領誕生という結論をすんなりと受け入れるとは・・・ことに白人社会が・・・私には到底思えないのだ。本選は白人層と黒人保守層の支持を受けて、おそらくマケインが勝つことになるだろう。

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今回の大統領予備選挙確実に民主党の候補が本選で勝つために、こうなってほしいとの形が私にはあった。それはヒラリーが大統領・オバマが副大統領の候補になる形だ。これがベストな形であったと思う。

ヒラリーが大統領になることで、まずアメリカは初の女性大統領を誕生させることになる。それはアメリカにとって第一のハードルをこえる、新たなできごとといえる。ヒラリーは今回当初から有力な大統領候補だった。予想された初の女性大統領誕生と予想外の初の黒人大統領誕生、それに対する抵抗感は後者に比べ前者はずっと少ない。

人はある出来事が以前から容易に予想できることであれば、それをあわてずに受け入れる気持ちをもてる。接戦にはなったかもしれないが、ヒラリーであれば世論調査がどういうおうと彼女は間違いなく勝てた。女性大統領の誕生を容認するアメリカ社会の新しい風、その構図をアメリカ国民の多くは受けいれたはずである。

そうなれば残るは、初の黒人大統領という次のステップだけだ。初の女性大統領と黒人副大統領の政権の誕生となれば、それは近い将来黒人大統領が誕生することへの心構えをアメリカ国民にもたせる出来事ともいえる。この段階を踏んだうえで黒人大統領が誕生することが、初の黒人大統領誕生への抵抗感をなくすもっともベストの形だったと思う。

そしてこのことは・・・副大統領の段階を踏む構図がベストであること・・・当然オバマも分かっているはずと私は思っていた。彼が本当に政治感覚に優れた人物なら、予備選のある一定の段階で今回はヒラリーに候補の座を譲り、自らは副大統領となって4年あるいは8年後の大統領選の有力候補として備えるだろう。そう思っていたのである。

しかし彼はそうしなかった。副大統領の段階をふもうとはしなかった。予備選優勢の風にその気になり、一気に頂点を目指しはじめた。彼には彼なりの計算があるのかもしれない。ここで本線の候補になれば今回負けても、これが次の大統領選へのステップにつながると。

しかし今回のように民主党内部に大きな対立を招いたことが、果たして今後・・・今回に限らず次の大統領選も含めて・・・彼の大統領獲得への道にプラスに働くか。それは大いに疑問である。今回勝てなければ、民主党は次期大統領選ではオバマではなく、別の候補・・・もちろんヒラリーでもないそして黒人でもない・・・を見つけ始めるだろう。それほどの(彼に対する)抵抗感を、彼は民主党内部に残したともいえる。

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「政治は一寸先は闇だ。なれるときになっておかなければチャンスをのがしてしまう。さらに4年あるいは8年も待てるか。」オバマがそう思うことは当然であるし、また非難される筋合いのものでもない。オバマは予備選で勝った。だから彼が民主党を代表する候補である。これで当たり前なのだ。だから予備選でどういう摩擦があろうが、民主党を支持するものは本選では彼を応援しなければならない。そういう意味では、私が書いた希望は所詮戯言にすぎない。

それでもである。今回のアメリカ大統領選挙で民主党政権の誕生を大いに期待していた私にとっては、今回の結果は喜べない。予備選でみせたヒラリーのあまりに攻撃的な性格は私にとって大きな誤算であった。あまりに攻撃的なこの性格こそ、彼女が選挙の流れを変えられなかったもっとも大きな要因ともいえる。そしてこのこと以上に、オバマが副大統領のステップを踏もうとしなかったことは、私のもっとも大きな誤算であった。このふたつの誤算はあまりに大きい。それは、共和党へ予想外の「漁夫の利」をもたらしてしまったといえる。

ここまできたら、なんとしてもオバマに勝った欲しい本選挙。大統領本選で、かの潜在的要因が表に出て争点になることはないだろう。しかしそのことへの抵抗感は、間違いなく存在する。それは、結果に大きな影響をあたえるであろう。本選で彼には、人種的本音を隠した「政策に具体性がない」「キャリアが浅い」というもっともらしい批判が・・・弱点の指摘・・・かこつけられるはずだ。それをどう彼はクリアしていくのか。マケインとの戦いは厳しい道のりになると言わざるをえない。

容易に勝てるはずの大統領選(本選)での戦いを、ここまで厳しくしてしまうこととなった今回の民主党の予備選。もし本選でオバマが勝てなければ、民主党にとって今回の予備選は悔いの残る予備選となったといえよう。
by phtk7161 | 2008-05-16 07:19